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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
特に純粋の日本語たる、固有の大和言葉がそうである。試みに我々の言語から、すべての外来音たる漢語一切を除いてみよ。後に残った純粋の大和言葉が、いかに平板単調なのっぺら棒で、語勢や強弱の全くない、だらだらした没表情のものであるかが解るだろう。
しかしこうした没音律の日本語にも、その平板的な調子の中に、或る種のユニックな美があるので、これが和歌等のものに於ける、優美な大和言葉の「調べ」になっている。けれどもこの特殊の美は、極めてなだらかな女性的な美である故に、或る種の抒情詩の表現には適するけれども、断じて叙事詩の表現には適合しない。叙事詩は男性的なものであるから、極めて強い語勢をもった、音律のきびきびした音律でなければ、到底表現が不可能である。アクセントもなく平仄もない、女性的優美の大和言葉は、いかにしても叙事詩の発想には適しない。これ実に日本に於て、昔から真の叙事詩が無い所以である。(此処で「真の」と断わるのは、多少それに類したものは、上古にも後世にもあったからだ。)
思うに日本語ほど、この点で特殊であり、非叙事詩的な国語は世界に無かろう。西洋の言語は、どこの国の言語であっても、ずっと音律が強く、平仄やアクセントがはっきりしている。