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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

特にその叙事詩的のことに於て、*独逸語は世界的に著るしい。独逸語の音律は、ニイチェが非難した如く軍隊の号令的で、どこまでも男性的にきびきびしており、音語が挑戦的に肩を張ってる。(実に独逸という国は言語からして叙事詩的に出来上っている。)東洋に於てさえも、支那語は極めてエピカルである。支那語は古代の漢音からして、平仄に強くアクセントがはっきりしている。故に支那の文学は、昔から叙事詩的な情操に富み、詩人は常に慷慨悲憤している。吾人が日本語によってこの種の表現をしようとすれば、いかにしても支那音の漢語を借り、和訳された漢文口調でする外はない。純粋の大和言葉を使った日には、平板的にだらだらとするばかりで、どんな激越の口調も出ない。(大和言葉によっては、決して革命は起らない。)明治の改革は、実に幕末志士の漢文学からなされたのである。

* 独逸語と支那語とが、発韻に於て多少似ていることに注意せよ。今日我が国の軍隊等で、少許のことを「じゃっかん」と言い、物乾場のことを「ぶっかんじょう」と言い、滑稽にまで無理に漢語を使用するのは、発音に於けるエピックな響を悦ぶのである。