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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

以上吾人は、できるだけ多くの場合について、一般に思惟される「詩的のもの」と「プロゼックのもの」とを対照して来た。だが前にも言った通り、こうした感じ方は人々によってちがうので、甲の人が詩的と感ずるもの、必ずしも乙の人にとっての詩的でない。反対に一方の人が詩と考えるところのものが、一方の人の散文であったりするかも知れない。畢竟上例したところのものは、仮りに大多数者の一致を見て、世間的通解によったにすぎないのである。故に吾人の地位を換えて、特殊な個人的の立場で見れば、もちろん一般の通解と異なるところの、別の詩的やプロゼックが有り得るだろう。次に吾人は、この特殊な場合を調べてみよう。

前の例に於て、通見は奈良や京都を詩的と言い、伊太利のヴェニスを「詩の都」と言う。けれども奈良や京都に住んでる人が、果して自分の住んでる町を、真に詩的と感じているだろうか。同じ別の例を言えば、欧米人は常に東洋を「詩の国」と言い、特に日本をドリームランドのように考えてる。けだし彼等にとっては、我々の鳥居や、仏寺や、キモノや、ゲイシャや、紙の家やが、すべて夢幻的な詩を感じさせるからである。