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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
それは愛の情操と並んで、道徳感の二大種目を対立している。(文芸の上に於て、いかにこの対立が現象してくるかは、後に至って解るであろう。)
かく道徳的情操は、本質に於ての詩的精神である故に、すべて倫理感を基調としている文芸は、必然に「詩」の観念に取り入れられる。しかしながらより真の詩を持つものは、道徳でなくして宗教である。なぜなら宗教は、一層「感情の意味」が濃厚であり、イデヤに於ての夢が深く、永遠に実在するものに対するプラトン的思慕の哲学を持っているから。実に宗教の本質は、或る超現在的なものへのあこがれであり、霊魂のイデヤに向う訴え(祈祷)である。故に宗教的情操の本質は、真の詩が有する第一義感の要素と符節し、芸術の最も高い精神を表象している。実に詩と宗教とは、本質に於て同じようなものである。ただ異なる点は、一方が表現であって、芸術の批判に属し、一方が行為であって倫理の批判に属するということにある。
宗教のより思弁的で、主観のより瞑想的なものは、即ち所謂哲学である。此処で哲学に就いて一言しよう。哲学という語の狭い意味は、科学に対する哲学――認識論や、形而上学や、論理学や、倫理学や――を意味している。