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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
しかしその語の広い意味は、かかる特殊的の学術でなく、一般に「哲学する精神」をもったところの、すべての思想や表現について言われる。即ちこの関係は、丁度「詩」という言語が、詩学の形式について言われる場合と、内容的に詩的精神を有するところの、一般について言われるのと同じである。そこで広い意味の哲学――即ち哲学的精神を有するもの――とは、すべて本質に於て主観を掲げ、何かの実在的なもの、もしくは普遍原理的なものに突入しようとする思想であって、例えばルッソオ、ゲーテ、ニイチェ、トルストイ等の詩学的人生評論の類が、みなこれに類している。
しかし哲学という言語の、さらに一層本質的に拡大された範囲に於ては、すべてイデヤを有する主観、及び主観的表現の一切を包括する。即ち例えば、これによって「芭蕉の哲学」とか「ワグネルの哲学」とか「*浮世絵の哲学」とか言われ、さらに或る芸術や文学やが、哲学を有するか否か等が批判される。この意味でいわれる哲学とは、哲学的精神に於ける究極のもの、即ち「主観性」について言われるのである。故に「哲学がない」と言うことは、主観性の掲げるイデヤがない、即ち本質上の詩がないという意味である。