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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
かのゲーテが「詩人は哲学を持たねばならぬ」と言ったのも、勿論この意味を指すのであろう。
* 浮世絵の哲学は或る頽廃的なる官能の世界に没落し、それと情死しようとするニヒリスティックなエロチシズムで、歌麿や春信が最もよく代表している。
最後に、詩的精神の最も遠い極地に於て、科学の没主観な太陽が輝やいている。明白に、だれも知っている如く、科学は主観的精神を排斥し、一切「感情の意味」を殺してしまう。故に科学にかかっては、道徳も宗教も型なしであり、知性の冷酷の眼で批判される。実に科学は、人生から「詩」を抹殺することにのみ、その意地あしき本務を持ってるように思われる。しかもこの科学的精神が、宇宙の不思議に対する詩的驚異と、未知の超現在を探ろうとする詩感に出発していることは、何という奇妙な矛盾だろう。けだし科学は、詩的精神の最も大胆な反語であって、その否定するところのものから、逆に他の「夢」を創ろうとするのである。故に科学のあるところには、常に飛行機があり、磁力があり、ラジオがあり、電信があり、不断の新しき発明と夢とがある。もし科学が無かったら、人生はいかに退屈にして変化がなく、夢のない単調のものになるであろう。