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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
と、いう。
いつになく改まっている師のすがたにも見えたので、典膳は何事かとあやしみながらも、
「かしこまりました」
と、素直にそこを去った。
そして庫裏へ行って、野僧や小坊主をあいてに話しこんだり、本堂で月をながめたり、ずいぶん時を費やしてから、
(もう、よかろうか)
と、師の部屋を窺ってみると、一刀斎と善鬼とは、依然、かたく対坐したまま、まだ何事か、話し中であった。
で、彼はまた、そっと戻って、ぜひなくこんどは外へ出た。そして大きな藁屋根のうえに更けた月をぽつねんと独り仰いでいた。
するとこうした静かな夜のしじまを突然やぶって、あらあらしい大声がどこかできこえた。たしかに方丈の一室である。師の泊っている部屋あたりだ。
「……や?」
からたちの垣がその外を囲んでいる。典膳は草履の音をしのばせてその外へ馳け寄った。内では、月のさす廂の奥で、善鬼が、呶鳴っているのである。
八
「ばっ、ばかなことを、お云いなさいっ。いかに、師であろうが、先生であろうが、余りといえば、ひとを莫迦にしたおことばだっ。いったいこの善鬼のどこがわるいんです! どこが」
ひどい声だ。すさまじい感情だ。