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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁

青空文庫

三

「…………」

獅子の眦には涙がにじんでくる。ここに勝ち得ないほどなら死ぬるがましであるかもしれない。不孝の罪だけでも死に値する。典膳の血相は刻々すさまじいものを加えるばかりだった。

一刀斎は、その息を聞いて、ふと、蚊遣の煙から此方を振向いた。

「……まだ、いたのか」

「仕合えっ。一刀斎」

「仕合はすんでいる」

「すんでいない。みろっ。神子上典膳はまだかくの如く健在だ。片輪者になってはおらぬぞ」

「なりたいのか」

「息の音のとまるまでは仕合する。弥五郎一刀斎を砕かぬうちは、生きては還らぬ」

「どうしても」

「起てっ。起たねば、卑怯なりと、世間へ嗤うてやるぞ」

「ぜひもないが……はてさて、身を弁えぬほど始末のわるい者はないの。山の高さも知れぬ無智をもって山にとりつく莫迦者があるかっ」

語尾つよく、大喝すると、その頭が天井をつくかと思うほどぬっと起ち上がった。反射的に、すぐ典膳が、身がまえを引緊めると、何事ぞ、一刀斎は横を向いて縁の方へ立出て、もう藁草履へ足をのせていた。

そして斜めに、風呂小屋のほうへ歩いてゆく。――と見て典膳が、疾風のように土間から跳び出すと、一刀斎は、