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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
五
五
惜しい。実に惜しい。
つまらない座談に千載の好機を逸してしまった。
何ものかを、あの人から学ぶべきであった。
客の帰った後で、宗厳は、寝もやらずそんな悔いをくり返していたが、また、
(案外、平凡な人物でもある)
と云う考えもわいて来た。
世間の大家とか達人とかのうちには、ずいぶんまやかし者も多い。禅をやってみて、禅門の名僧智識などに見参してみても、よくそういう失望に会う。
得態のしれない公案や一喝をくれて取り澄ましていられると、
(これは抑、真ものなりや、偽ものなりや)
ちょっと惑わさせられる。
何ぞ知らん、ただの交際いになってみると、ただの俗人以上の何ものでもなかったりする。いや俗衆以下の場合さえ往々にある。
書にも画にも陶器や仏像にさえ偽物は世上に横行しているのだ。いわんや人間にあって不思議はない。
彼が騙くのではなく、こちらの眼が曇っている罪ともいえよう。――真を観るむずかしさ。直指人心。これができれば、もう或る所までその人間は達している。
「はてな?」
宗厳は、疑いだした。
宝蔵院の和尚にしても、ああ極言して賞めちぎったが、道において、あの和尚と自分と境地は、大差はない。