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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
四
六
外出していた郎党や、新宮十郎行家の兵などが、火の手を見て、馳けつけて来たため、土佐房昌俊たちの襲撃隊は、かえって挾み討ちとなってしまった。
昌俊は、追われて、鞍馬へ逃げこんだが、鞍馬の山僧に捕えられて、二十六日、都へ曳かれた。すぐ首斬られて、その首は、六条河原の秋風に黒ずむまで曝されていた。
十一月、洛内の動揺は、もう制しきれないものになっていた。鎌倉の大軍が上ると聞えて来たのである。義経も必ず反撃するものと見てか、頼朝自身、黄瀬川のあたりまで、兵馬を進ませて来たともいう。
「……浅ましや」
義経は、心で泣いた。
夜も寝られない容子であった。その良人へ、静は、どんなに心をこめて侍いても、慰めきれない思いだった。――果ては、共に手を取り合って、
「天下の兵を敵とするも、怖ろしくはないが、肉親の兄へ引く弓はない。およそこの身ほど、骨肉に薄命な者があろうか。襁褓の中より父兄弟にわかれ、七ツの頃、母の手からもぎ去られ、ようやく、兄君とも会って、平家を討ったと思うも束の間、兄たる御方から兵をさし向けらるるとは」
「そのお心が、どうして、鎌倉へは通じないものでしょうか。