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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁

青空文庫

九

十一

その日、清経に伴われて、静は、頼朝夫妻の前に出た。――初めて、実にきょう初めて、わが良人と血をわけている兄なる人と、嫂の君とを見たのであった。

舞殿の東側の一段高い席に、頼朝と政子は居並んで彼女を見た。夫妻は、物珍しいものでも見るように、静のしとやかな礼儀を見まもっていた。

「思ったよりは、※れてもいない。なかなか気丈そうな女子ですこと。――何か、お言葉をかけておやりなさい」

政子に囁かれて頼朝は初めて云った。

「静というか」

「……はい」

「幾歳になった」

「二十歳になりました」

「二十歳……ほう」

夫妻は、顔を見あわせた。何の品評をしているのか、静には、その心が酌めなかった。

「愚かよのう。まだ年ばえも二十歳を越えず、世に隠れない舞の手も持ちながら、何で、九郎冠者のような、埒もない男を恋い慕うぞ。……はははは、酔狂な女子よ」

静は、水のように、冷やかな感情になった。この良人の肉親は、またその妻である人も、自分を、弟の妻とはまったく視ていないことがよく分った。飽くまで白拍子あがりの遊び女と遇しているのである。

(なんで、こんな人に憐れをすがろうぞ)

彼女は、唇をかんだ。