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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
二
京都で聞えている薬師の店の主だと云った。妙心寺のお書付も所持しているし、授翁和尚もよく存じ上げている。自分の家法とする金創の名薬は、以前、その授翁様を通じて、前に討死遊ばした正成様の御陣へもさしあげて、お賞にあずかったことがあると云った。
「して、その薬師が、この戦場へ何しに、また何用で、われらを呼びとめたか」
輿の従者たちが咎め返すと、蔵六は、家法の陣中薬を、東条の城へ献納のために来たと答え、洛内の商民である自分らとしては、せめてこういうことでもするしか、朝廷への御奉公の道はないので――などと云い足した。
「いかがしたものでしょうか」
従者のひとりは、輿の内なる若い女性に伺っていた。蔵六のことばを民草のしおらしい真心と聞いたか、たけた声音の主は、計ろうてとらせてやるがよいと、内で云った。
二
千早、金剛山は云わずもがなである。この辺はどんな小山も窪地も、柵や寨でないところはない。
だが蔵六は、折ふし途中で会った内侍の供に加わって来たので、難なく要塞の本拠まで入れた。後で聞けば、輿の上は、吉野の仮宮に仕える内侍所の女性で、何かのお使いで東条の城へ見えた途中であったという。