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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
七
「合戦のあるたびに、どれほどな捨児や親のない子が、町にふえるかわかりませぬ」
「限りのないことを! ……。彼女の物ずきにも困ったものだ。夫人を呼べ」
於霜がためらっていると、忠興は舌打ちして、
「よいっ。わしが参る」
と、自身で戻った。
七
「迦羅奢。あんな汚い長屋は取払え」
忠興は、妻を室へ呼んで、云い渡した。
同い年の良人と夫人とを、こう見くらべると、良人のほうが、多分に若気であった。
迦羅奢は、にこと笑って、
「お気に入りませぬか」と、云った。
それには答えず、顔つきで云って、
「道楽もほどにいたすがよい。鼓を習うとか、香技を楽しむとか、小舞をするとかいうならべつなこと、物ずきも程がある」
「何で物ずきでございましょう。世にあわれな子たちを養ってとらせることが」
「その数が、天下にどれほどあると思う。どうなるか。あれしきの長屋建に容れたところで」
「でも、せめて縁ある子だけでも」
「小愛というものだ。眼に見える範囲しか愛せない。それも、愛の遊び事という程度の――」
「でも、小舞や鼓を弄ぶよりは」
「いや、ちがう! そのほうが良人がうれしいのだ。考えてみい、血なまぐさい戦場に、一年、半年と長陣して、やれ邸へ帰って寛ごうと思えば、捨児の啼き声など聞かされて堪ろうか。