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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
十
と、日頃からやさしい良人であった一面を見せていたりした。
「もう、この世での、家庭の日は」
と、丹女の観念も、そこに行き着いていたが、赤穂表の情勢は、急転直下、開城退散ときまり、同志の密盟とかたちを変え、ために、思いがけなく、彼女はふたたび良人十内のすがたを家に迎える日に会った。
六
所詮、前のような生活はしていられないので、十内が帰ると、すぐ家は引移った。
東洞院の西、竹之辻という藪添いの手狭い浪宅だった。
けれど、その年の夏から、翌元禄十五年の秋までの、一年余りの佗暮しは、丹女にとって、もう一度新たに十内へ嫁して、百年のちぎりを結び直したほど、欣ばしくもあり楽しくもあった。
世間の眼は、ようやく、赤穂の遺臣の心根に猜疑を向け、かげ口、露骨な誹り、蔑しみなど、冷たいものの中ではあったが、
(誰か知ろう万丈の雪)
と、十内はいつも笑っている。また丹女も、貧苦とたたかい、そうした世間をひがみもせず、やがての日には、必ず相別れる良人を、いかにして一日でも機嫌よく送らせることができるか、また、自分も心残りなく楽しんで暮してゆけるか、それのみに心をくだいて、一日一日を愛しんでいた。