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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
四
たいがい秋の末か、この冬であろう」
「何を仰せられますか」
「死期のことじゃ」
「そ、そんな……ことは」
兵庫は泣き出した。二十八の――しかも千五百石で求められるほどな武士の偉材だったが、幼少から一倍愛された祖父のまえでは、やはりただの孫であった。
「愚かな涙を……」
と、叱りながらも、石舟斎の面もまた、一抹の哀愁はある。人間と生れたからは、何人にも是非ない別離の傷心であった。
「あらためて、今日はそちに授けておくものがある」
彼は自筆の「柳生流印可」の長巻に添えて、かつて自身が、上泉伊勢守からうけた、「新陰流相伝の書」「新陰絵目録」の三つをことごとく兵庫に授けたのだった。
「わしに一族の児輩は多いが、これを役立たしてくれそうなものは、そちしかない。終生、師鑑としてこれに怠るな。道業はそち一身や一生のみじかいものではないぞ。世々ひろく末代の衆と国土に益さねばならぬ。これを享くる者の任はゆえに重い……たのむぞ、兵庫」
四
江戸表の但馬守宗矩は、国元の急報に接して、将軍家に暇を乞い、落葉しきりな晩秋の駅路を、大和へさして急いでいた。
にわかに病のあらたまった石舟斎は、病床からひとみを動かして、