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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁

青空文庫

五

伊勢守に対する欽仰の念が、彼の小我や妄念のすべてを解決したのである。――潔く、彼は伊勢守に入門を乞うた。

「お心根を見とどけた。不肖ながらお手を取って進ぜよう」

伊勢守は、九州へ立つ日取を遽に変更して、柳生城へ臨んだ。

柳生城では、元より師として、朝夕の礼をうけ、本丸の一棟に住んでいた。後に、彼の起臥の跡というので「新陰堂」と名づけられた建物である。

春の頃から秋まで、およそ半年の滞在だった。

その間に、疋田文五郎は、暇をもらって、ひとり廻国に出た。後に疋田陰流を創始して、栖雲斎と号し、伊勢守の門を出た者として、また伊勢守の甥としても、名を辱めなかった。

宗厳も、刻苦した。

「長い御縁の望まれぬ師」

と思えば、なおさら、伊勢守の一言半句も、一挙一動も、あだには接していられなかった。

五

朝、昼、夜、時も選ばず師事し研鑚した。また伊勢守もまた、訓えを惜しまなかった。

天地に秋の声を聴くと、一日、伊勢守は宗厳を室に招いて、

「もうよいでしょう。お別れしたい」

と、云った。

そして、別れるに臨んで、最後のことばとして訓えた。

「宝蔵坊へ三日お通いになって三日ともあなたが敗れた。