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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
三
そう察して、蔵六が、献上と称して持って来た物は、案のじょう、
「よくぞ」
とばかり寨の人々に歓ばれた。
各所の小合戦は絶え間ないし、傷者は殖えるばかりだし、それにまた、蔵六が、薬師というので、
「御奉公のため、働きたいというか。殊勝なことである」
と、そのまま、城寨のうちにいることも許された。
「しめた。ここまで事が運べば」
蔵六は、目的に向って、徐々と眼を光らし始めた。
三
漆間小四郎綱高は、こんど十七歳での出陣だった。初陣ではなく、何度かの合戦で、いつも敵の強豪を打ち、足利勢のうちでも、
「小綱は、一の武者よ。親まさり、主まさりよ」
と、褒められ者であった。
その小綱は、漆間蔵六の子息であった。自慢息子なのである。男の子三人のうちの次男であった。
ところが、この秋、浪華附近の激戦の折、乱軍の中で、楠木勢の手に、捕虜になったと伝えられた。
「よもや、彼が」
親の欲目のみではない。彼の主人山名時氏も、戦死であろうと、思っていたところ、その後、やはり楠木氏の捕虜になったが、逃げ帰って来たという者のはなしによると、
「小綱は、敵方の東条に生きている。しかも、楠木一族へ、忠誠を誓って、助かっている」