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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁

青空文庫

師走の十三日附で、江戸から来た良人の手紙には、

――忠義に死したるからだを、天下のもののふに示して、人の心を励まさん事、却って本望にて候。

とあり、なお、

――ゆめゆめお気遣いめされまじく候、もはや言うべき節もなく、ただただそこもとの事、思いやるばかりにて候。

と、見えた。そして、大石主税の短冊が一葉封じてあった。

復讐の挙は、翌十四日に決行され、一盟四十七士の大志は、貫徹した。そして、次の消息は、大石内蔵助たちと共に、お預けとなった細川家の内から来た。

翌年の二月初め――切腹のその日まで、十内と丹女との文通は、ひと目も羨むほどだった。

丹女からの手紙の端に書き送った歌――

ふでのあと

みるに泪の時雨来て

いいかえすべき言の葉もなし

は、義士たちの仲間にも、細川家の家士のあいだにも、評判となって、十内夫婦の仲は、まるで若夫婦でもあるように、人々から、からかわれた。

「そう、おからかい下さるな。せがれの幸右衛門は、まだ独り身でござれば」

十内は、真顔になって、それへ答えた。

倖い、同じ細川家へとお預けになったので、幸右衛門は、養母に代って、切腹の朝まで、養父の世話をよくした。