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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
街道のうわさは、軍馬よりも先に、都へ聞えてきた。洛内の庶民は、もう家財を片づけ出した。義経はそれを、仙洞御所へ参院した戻り道に見て覚った。
「あわれ、彼等もみな、この義経が、兄に弓引く者と思うているのか。天下、誰あって、この義経の心を知ってくれる者もない」
彼は、牛車の中で嘆じた。――そう淋しく思う時、ただひとり彼の胸には静のすがたがあった。
五
「京都守護の任にある義経を討たんとすれば、京都は当然兵火につつまれ、ひいては天下の大乱となろう。よろしく彼に先んじて、頼朝追討の院旨を、義経へ下し給うべきである」
大蔵卿泰経は、九条兼実や左大臣経宗や、内大臣実定などを説きまわった。後白河法皇のお心もそこに決しられてあるという。
誰も、誰も、義経の心を知らないのだ。
「京へ、鎌倉の兵を入れるな。尾張美濃の境、墨股河へ馳せ下って、義経に、鎌倉討伐の第一箭を放たすがよい」
同意は、多かった。
法皇を繞って、活溌な策動が初まっていた。――が、何たることか、その頃もう土佐房昌俊らの手勢は、変装して洛内に入りこんでいたのである。
十月十七日の夜だった。
堀川べりの六条室町の館へ、どっと襲せて、いきなり火を放けた軍勢がある。