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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁

青空文庫

九

明けて文治二年の一月末には、静も母も、鎌倉幕府の罪人として、安達新三郎清経の邸に預けられていた。

氷のような吟味の床に、静は、幾たびも、坐らせられた。

「義経の行方を云え」

との厳問である。

清経は、こう責めた。

「そちのように、情の細やかな者が、途中で義経と別れ去ったとは腑に落ちぬ。どこか、再会の場所を約しているのであろう」

静は、余りに責められるので、幾分、しどろになって、

「いえいえ、一度は私も、お別れするに耐えかねて、峰の一の鳥居あたりまで、お後を慕って行きましたが、女人の入峰は禁制とのことに、泣く泣く戻って参りました」

吟味の筆記が、やがて頼朝の手もとへ上げられて来た。頼朝は、それを見て、

「先に、吉野の蔵王堂で、時政が調べ取ったことばと相違がある。いよいよ、厳しく折檻して、実を吐かせい」

と、清経に対して、不機嫌を示した。

清経は、恐懼して、さらに、静を辛辣に責めた。余りに長い時間を冷たい板床にひき据えられていたせいか、静は、急に眉をひそめ、蒼白くなって苦しげに俯っ伏した。

驚いて、医師を呼び、薬を求めると、医師は云った。

「病気ではない。