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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
六
「何じゃ。あのうるさい嬰児の泣き声は」
或る折。
忠興が長い戦場生活から帰って、久しぶりの寛ぎに、庭園の花壇を見てあるいていると、そのふさわしくない長屋棟や、そこから洩れる声が耳についたので、忽ち、不機嫌な眉をひそめて、居合せた於霜という奥仕えの侍女にたずねた。
この於霜は、三戸野の山中にまる二年、夫人が幽居していた頃から、側近く召使って来たあの炭焼の小娘であったが、今はもう見違えるばかりになっていた。
「お目障りになりましたか」
於霜は忠興の眉を、畏る畏る見あげながら答えた。
「あのような声が洩れぬように、また、長屋などもお眼にふれぬよう、庭師を入れて、樹々の蔭につつませるようと、奥方さまも仰せられていらっしゃいましたが、御帰還の間にあいませいで、お目に障り、申しわけがございませぬ」
「樹でつつむ。誰がそう叱っている。わしが訊くのは、あれは何だということだ。――何だあれは!」
「はい」
「云い難いことか」
「左様なものではございませぬ。奥方さまのお慈愛から、市中の捨児や親のない孤児を拾うて、養ってやるお長屋でござります」
「何。……捨児や孤児をひろい寄せておると」