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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁

青空文庫

現状の程度で幾日あるだろうか。

「――司令官、ただ今、征討軍本部から電信がありました。陸軍卿の山県有朋閣下からであります」

うしろに電信課の書記が直立していた。

「お。そうか」

受取って見ているところへまた、

「いやどうも、たいへんな中で大変なことが持上がりました」

と、児玉少佐が、快活な笑い顔して上って来た。

「何じゃね、大変な事が持上がったとは」

「与倉中佐の奥さんが、病院でお産したのです。男の子が生れました」

「ほう! 今朝の大砲の音で産気づいたな。……めでたい。早く与倉君に知らせてやりたまえ」

「先程から兵卒をやって、すぐ嬰ン坊の顔を見に来いと云ってやったんですが、段山の陣地で軍務についておる身だから、そんなものは見に行かれんという返事です。……見たくてしようがないくせに負惜しみしとるんですな。はははは」

「ありがとう」

将軍は、段山の方へ向って、心もち頭を下げたが、屹と胸を正して少佐に云った。

「児玉君。わしもお見舞に行ってあげたいが、寸時もここは離れられん。……家内は経験があるからよく産後を看ておあげするよう、君からも云うてくれんか」

昼近くなるにつれて、砲声はいんいんと震撼しはじめた。