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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
この宗厳にとって、生死に関わる問題です」
「生死に」
動じない胤栄も、すこし眼をみはった。
長い交友なので、宗厳の人がらはよく知っている。かりそめにも衒気や大袈裟を云わない人である。その宗厳がきょうは沈痛な面もちで、
――生死の問題
と云ったので、胤栄も驚いたのである。
「ほかの儀ではないが」
と、宗厳は、伊勢守に出会って後、またその前からも抱いていた苦悶を、何の見得もなく打明けた。
「――要するに、自分は自分に対して、日頃から不満でならない。未熟を知っている。多分な疑いを抱いている。まだ一日として、これでよいと、自分で安んじたことはない」
宗厳は、云うのであった。
「しかし人は、この身をさして、新当流の奥儀に達した者とかいう。畿内第一の剣であるなどとも噂する。いよいよもって恥かしい。何ぞ知ろうわし自身は、ここ数年前から、殆ど、壁に頭を打ちつけたように、道も悟れず、技も進まず、ただ昏迷があるばかりだ。時にはつかれ、時には諦めの嘆息が出て、剣も捨ててしまいたくなる。――かくまで喘ぎつめてきた剣の道、それはもうわしの生命だ、それを捨てて、宗厳の生はない」
「…………」