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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
「いや、児玉少佐、抛っといてくれ」
「なぜですか、将軍」
「女子たちも、歓んでしておることじゃろ――歓びをもって」
「はっ、私も、そうとは思いますが。……でも、強いて危険に身を曝さなくても」
「弾丸に身を曝すも、飢餓にただようも、同じじゃ。ただ、与倉未亡人までが、乳呑児を負うて出ているのは、余りにもいたいたしい。それではわれわれ男児が、かえって断腸の思いにたえん。愧死せねばならなくなる。――と、わしが云うとると伝えて、未亡人だけは安全な場所へ連れて行ってくれい。済まんが、君、行ってくれんか」
「承知しました」
高井軍曹が駈けて行った後から、児玉少佐も宙を飛んで行った。
十五
粟粥を金の粥、玄米粥を銀の粥などと洒落ていたのは、もう二十日も前の夢で、焼け跡の味噌や沢庵漬も掘りつくし、馬糧の燕麦も喰べてしまい、およそ喰えそうなものは、土をふるい、木の皮を剥がしてまで胃に入れてしまった。
「弾が一発あると、敵を撃とうか、雀を撃って喰おうかなんて、考えちまうことがあるよ」
頬のこけた籠城兵と、眼のくぼんだ籠城兵とが、塹壕のなかで、土蜘蛛みたいに首をひそめて語り合っていた。