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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
四
床板が踏み抜けるように鳴った。ふたつの体のうごきが一渦の旋風とも見えたせつな、
――戛っ。ぱツん!
二断に異様なひびきがした。
宗厳の木剣は打落されていたのである。
そして宗厳は、茫然と立っていた。
「おそれいりました」
坐って、両手をつかえると、しばらくは胸を正せなかった。肩で大きく息をしていた。
伊勢守も静かに坐って、
「失礼いたした」
心もちにこやかに顔を和ませて云う。宗厳は、その変らないすがたを仰ぐと、心の底から、
「無念な」
と、思った。
敵に怨みをふくむような小さい歪んだ憤念ではない。自分の未熟に対する憤りだった。
――彼も人、われも人。
と思い較ぶるところから沸く無念である。自分へ責めそそぐ悲涙であった。
四
「席を改めて、お詫び申そう。何かと、一昨日のお名残もござれば」
伊勢守が起つと、胤栄も、惨たる面持して、気の毒そうに、
「いかがですか。奥へお越しになって、御悠りと遊ばしませぬか」
と、云い添えた。
さし俯向いていた宗厳は、
「いや、きょうはこれでお暇いたしたい。ただ上泉殿へお願いがござる。明日またお訪ね申しますゆえ、もう一度、お仕合くださいますまいか」