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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁

青空文庫

三

「所詮、まだ若年者、御師範などとは、烏滸がましゅう思われますが、お相手という程なれば」

「どちらでもよい」

「五男の宗矩をお召しつれ給われば、ありがたい仕合せに存じまする」

「宗矩をか」

と、家康は、改めて、石舟斎の床几の左に坐っている二人の若者をながめた。

家康から眼を注がれると、宗矩はハッとしたように頭を下げた。けれど彼の隣にある兄の五郎右衛門は、ここの木陰のそよ風と、耳を洗うような快い蝉しぐれの音に、先刻からうっとりとしていたが、いつのまにか居眠りをし始めていた。

また。石舟斎の右側にひかえていた孫の兵庫は、眼をつぶらに見はって、無遠慮に家康の顔ばかり見ているのである。血はひとつの父母から生れても、その性格は三人三様であった。

三

五郎右衛門の居眠りも、兵庫の無遠慮も、石舟斎は、これがありのままの若者と、許しているかのように、咎めもしなかった。

家康も、にやにや眺めて、敢て、それに依って、石舟斎の躾を疑おうとしなかった。

「宗矩は幾歳になるの?」

「二十六歳にございます」

「そちが推挙するからには、この三名のうちでは、宗矩がもっとも道に達しておると認めておるのか」