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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁

青空文庫

囲みを解いて引揚げた敵の筒井城から、軍使が来た。

「御子息の生命は、捕虜として預かってある。降伏人として、城池を出らるる場合は、御子息の身は返して進ぜる。――御評議もあろうゆえ、回答には、三日の猶予をお待ち申すであろう」

軍使は、すでに勝者の態度で臨んで来たのである。いずれを選ぶも随意と、あっさり告げて帰った。

帰った後、惨たる一族の顔が、大曲輪の一室に集まった。どの顔も、眼は落ち窪み、髪は茫々として、血や泥や汗のうえに、さらに、濃い憂色に塗りつぶされていた。

「……どうするか?」

それだけのことだが、一致は難しかった。

家厳は、父として、心強く云う。

「生れながら、武門の後継とはなりかねる病弱な子だ。いつかは、僧門へ入れようとすら思い断っていた新介……。祖父以来の城池と名誉にはかえられぬ」――と。

だが一方。

親族の柳生河内、菅原夕菴、譜代の木村五平太、服部織部介、庄田喜兵衛次、和田、野々宮、松枝などの老臣旗下たちは、

「仰せではありますが、それは殿のお眼ちがいでありまた、われわれどもも、昨日まで、まったく若殿を、お見損ね申していたので、今日となっては、断じて、新介様を見殺しにいたすわけには参りませぬ」