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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
「……これは」
伊勢守のひとみが革まった。
彼は宗厳を、自分の想像していた以上に見直したらしい。きょうは生死の問題だと云ったという、最前胤栄から聞いたことばを思い出して、
「さもあろうか」
と、うなずいた。
動かない。
一方は山の如く、一方は水のように、木剣と木剣とは、ひそとしたまま動かないのである。
ただ刻々と、宗厳の形相が蒼白く硬ばって来た。毛髪のすべてが気息に喘ぎ出したように見える。
宗厳はそうした丹田のそこで、
「何ほどのことが」
と、気をもって、まず伊勢守を圧しようとした。
彼は無数の剣者を、きょうまでは、およそその気をもって圧伏し得た。剣はその後に加える勝利の形を取るものにすぎなかった。
――が、きょうの相手は、如何ともすることができなかった。まるで無反応な存在である。山へ向って声を張るように、気ばかり渇れてしまうのだった。
「彼も人! われも人!」
肚の底で喚いてみた。が、そんな空しい相対性の観念を奮ってみても何のかいもない。いたずらに毛の根が汗ばむばかりだった。
猛鷲が蒐るように、宗厳はいきなり跳びついた。理念をふみ超えた一瞬の捨身である。