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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
さいごに、典膳は、その薪でしたたかに肩を打たれたのである。
体の骨がばらばらに打砕かれたと思ったとき、ずしんと腰の坐骨を大地について坐っていた。
刀は遠くへ刎ねとばされている。そして一刀斎のすがたは夕月の下に、依然、一幹の松が嘯くように立っている。
「…………」
それを仰ぎながら、典膳はもう喚く声も出なかった。いや腰すら起てない。ただ満面に凄愴な汗を光らせながら、大きく両方の肩で息をつくばかりだった。
「若者。気がすんだか」
一刀斎は風呂小屋の方へ歩みだした。そこの薪の棚へ、手の薪を返して、ふたたび典膳のまえを通りぬけ、母屋のうちへ姿をかくした。
「……ああ。……もし」
よろよろと彼は起った。何を訴えるとも考えず、一刀斎のすがたに惹かれて起ったのである。――が、そのとき垣の外からひとりの男がこの家へ戻って来た。一刀斎の弟子の善鬼である。うさん臭そうな眼をくれて善鬼も土間のうちへ隠れてしまう。典膳は落ちている自分の刀を拾うと、生きている辱に耐えられないように、惨たる面を両手で蔽って、脱兎のごとくこの家の門から外へ駈け去った。
二
武道家の門人として、大小を帯び、侍には装っているが、善鬼の肥肉は余りに逞しすぎて、その起居までも、前身の船頭癖から脱けなかった。