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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁

青空文庫

夜が白む。まだ朝露のふかい間に、この師弟三人は、もう昨夜の寺を出て、先の旅へと、黙々、野路を歩いていた。

今朝、寺の筧の水で、起抜けに顔を洗うときから、善鬼の面には、夜来の感情がすこしも拭われていないのみか、むしろ、そそ毛立っているような凄気をすら――典膳は、ひそかに見ていた。

ゆうべ彼が師と争ったことの内容は、典膳にもほぼ推察されていた。それだけに、彼としても、この兄弟子に、何となく気まずいものを覚えずにいられない。自然、腫れ物にでも触るような無口がつづく。

師の弥五郎一刀斎もきょうばかりは少し常と容子がちがう。察するに、胸の中で、夜来の問題を、いかに解決すべきか。師として、また人間として、さらに、奉ずる剣道の上から観て――善鬼と典膳と、ふたりの弟子の将来に、並ならぬ苦悶を抱いているらしく思われる。

陽は高くなる。草も乾く。きょうも烈しい土用照りだった。下総半国もつづいているかと思われる小金ヶ原の果てなき野道を、こう三人は、草いきれのような胸を抱いて歩いた。

昼顔や切れぬ草鞋の板となる

誰やらの句も偲ばれて、足の裏すら熱かった。――一刀斎はふと杖を止め、一朶の白雲を仰いでいたが、このときもう彼の考えは定まっていたものの如く、善鬼と典膳を顧みて、