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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
彼も「道」をさがしている人間だった。宗厳も「道」を求めて熄まない。人生の道、兵法の道、禅の道、極まりのない道である。――おたがいに迷悟の定まらない者同士が、
「人と生れたからには、何とかして、人間が到り得る境地まで、この心を磨いて、辿り着いてみたい」
という熱望の悶えを――いわゆる道心を――常日頃から語りあっている仲であった。
月々、父母の忌日には、必ずその胤栄が自身で読経にやってくる。そしては、お互いの修行を語りあっていたが、つい四、五日前に見えた折、
「時に、わしは近頃、稀代な人を見たぞよ」
と、胤栄が云った。
「稀代な人とは」
宗厳が問うと、
「剣の達人じゃ。いや名人の境に達していよう。人品もよい。深淵をのぞくようでな。乱世の巷からもあんな人物が出るものかのう」
「よほど傾倒されておられますな。御僧はいったい、なかなか人にゆるさぬ方だが」
「四十年来、わしが参ったと感じたのは、ひとり伊勢守殿だけじゃ」
「伊勢守と云われますか」
「もと上州大胡の城主であったが、後、長野信濃守に仕えて一方の将となり、その主家長野氏も武田信玄に攻略されたので、以来、甲州武田家に随身して、客分同様、気ままに諸国を遊歴しておらるるとか」