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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
わたくしが兄君様から、弟の妻と、許されているものならば、身を捨てても、鎌倉へ下って、あなた様のお胸のほどを、お訴えいたしましょうものを……」
ふたりは身も心も一つに悶え合って、もう大廂に木の葉の雨も落ち尽した初冬の夜を泣き明かした。
七
風評が風評を生み、今にも大乱と化すように、洛中の貴賤上下の騒ぎが濃くなれば濃くなるほど、義経の心は、誰にも分らなくなっていた。
頼朝追討の宣旨は、もう朝議で決定していた。義経の手に下るばかりになっている。ここでも、彼の心を少しでも知ってくれる者は一人もなかった。
叔父の行家さえ、その策動に、夢中になっていた。義経を押立てて、一合戦のもくろみである。堂上、世上の人々が、まったく義経の本心を見失って、ただ血眼に騒いでいるのもむりなかった。
「最期の日が近づいた。――静、そなただけは、確と、わしの心を見ておろうな」
「仰せまでもございません」
ふたりは、密かに誓っていた。犬死する気はないが、そうかと云って、戦う気も飽くまでなかった。その間に処す身支度だった。
幸いにも、義経の望みは、法皇の御聴許となった。一先ず九州の地頭として、都を去ることになったのである。