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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁

青空文庫

お叱りをうけて、三戸野の山へやられました時、あなた様は、私へこう仰せになりました。――そなたは卑怯ではないか、母として生きる道、妻として生きぬく道、その辛い長い道をわすれて、いちばん容易い死の道をいそぐ法やあると――。わたくしはあの折のお叱りを、胸に石碑としております。それ故に、求めてさがし得た信仰でございます。生きる道の力とも燈火ともして」

云い終らないうちに、忠興は、

「うるさい、うるさい。それほど好きなれば、勝手に信仰せい。……だが、わしの眼の見えるところではするな」

と、云って、手枕で横に寝てしまった。

十

――わしの眼の見えるところではするな!

忠興の無意識に云ったことばが、それから数年の後、讖をなして怖ろしい予言となってしまった。

それは、慶長五年の七月だった。

太閤は世を去って、時代はまた、大きな転換を兆していた。

石田治部少輔三成が、上杉景勝と、東西から呼応して、家康を討とうと計ったことから、関ヶ原の乱は、急速に醸されていた。

細川忠興は、三男の忠利を、江戸に質子とし、次男興秋と、嫡男の忠隆をつれて、家康の陣に加わり、宇都宮に出陣していた。