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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
もちろん薬品や繃帯は疾くにない。
「皆さま。御苦労ですが、お手のあいている方は、わたくしと一緒に、兵糧蔵までお運び下さいませんか。兵糧蔵まで」
谷玖満子夫人が、外で声を張っていた。
病棟で働いていた婦人たちのうちから十数人がそこへ集まった。
他の棟からも出ていた。何十人かの婦人部隊がすぐ編制された。玖満子はその人々をつれて、焼け残りの兵糧蔵へ向って行った。
二月十九日の開戦一日前の火災で、食糧の倉庫はほとんど焼失していたが、一部の穀倉長屋は、救われていた。
と云っても、勿論、その中のものは、籾一粒あまさず喰べ尽してある。経理課属糧食係の柳川中尉は、きょう夫人が突然、その空屋にひとしい穀倉長屋を開けてくれと申し出たので、不審な念にとらわれながら、全部の戸を開いて、
「この通りです」
と、云わぬばかり実証を示していた。
しかし、玖満子夫人は、経理課員や糧食係の怪訝っていることなど、少しも意にかけず、婦人部隊の全員に、そこへ入って、食物を獲ることを命じた。
「あるのでございましょうか、何かこの中に」
婦人たちのうちでも怪しんで問う者があった。
「あります!」
彼女は明言した。