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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子・日本名婦伝(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 頁
林間の一茶亭には、釜がかかっていた。その辺りのたたずまいでは、今し方まで、家康の主従と、大徳寺の僧などが、そこで茶を喫していたらしく思える。
「すぐにと、お仮屋の方で、お待ちうけになられていますが、お急ぎにはあたりません。それなる清流でゆるゆる汗をお拭い遊ばした上で、お支度もととのえ、それからお目通りなされたがよいでしょう」
長政は、士卒にいいつけて、小桶やら手拭などを、流れの側に運ばせた。
「――何事も其許任せに」
と云わぬばかり、石舟斎はうなずいて、彼のいうがままに、そこで顔の汗塩を洗い、手足をそそぎ、刀の笄を抜いて、孫の兵庫の髪まで撫でつけてやった。
「祖父様のお髷もすこし直しましょう」
と、兵庫は、笄を取って、石舟斎のうしろに廻った。
兄の五郎右衛門はまた、弟の袴腰をうしろから締め直してやっている。――こうした些事は日常の家庭で繰返している生活の断片にすぎないが、この林間に切離して見ていると、日頃の家風も偲ばれて、美しくもあり床しい情景でもあった。
「お支度はおよろしゅうございますか」
長政も一休みして、物陰から立出て来ると、石舟斎は礼儀を施して、