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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
「随分色々な者が入り込んで居るだろうね」
「エ、其りゃ色々な手合が来てまさァ」
「随分破落戸も居るだろうね」
「エ、何、其様でもありませんが。――一人困った奴が居ましてな。よく強淫をやりァがるんです。成る可く身分の好い人のかみさんだの娘だのをいくんです。身分の好い人だと、成丈外聞のない様にしますからな。何時ぞやも、農家の娘でね、十五六のが草苅りに往ってたのを、奴が捉えましてな。丁度其処に木を伐りに来た男が見つけて、大騒ぎになりました。――其奴ですか。到頭村から追い出されて、今では大津に往って、漁場を稼いで居るってことです」
山が三方から近く寄って来た。唯有る人家に立寄って、井戸の水をもらって飲む。桔槹の釣瓶はバケツで、井戸側は径三尺もある桂の丸木の中をくりぬいたのである。一丈余もある水際までぶっ通しらしい。而して水はさながら水晶である。まだ此辺までは耕地は無い。海上のガス即ち霧が襲うて来るので、根菜類は出来るが、地上に育つものは穀物蔬菜何も出来ず、どうしても三里内地に入らねば麦も何も出来ないのである。
鹿の角を沢山背負うて来る男に会うた。茶路川の水涸れた川床が左に見えて来た。