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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
両腕はまさに脱ける様だ。斯くして持ち込まれた水は、細君女中によって金漿玉露と惜み/\使われる。
余り腕が痛いので、東京に出たついでに、渋谷の道玄坂で天秤棒を買って来た。丁度股引尻からげ天秤棒を肩にした姿を山路愛山君に見られ、理想を実行すると笑止な顔で笑われた。買って戻った天秤棒で、早速翌朝から手桶とバケツとを振り分けに担うて、汐汲みならぬ髯男の水汲と出かけた。両手に提げるより幾何か優だが、使い馴れぬ肩と腰が思う様に言う事を聴いてくれぬ。天秤棒に肩を入れ、曳やっと立てば、腰がフラ/\する。膝はぎくりと折れそうに、体は顛倒りそうになる。と足を踏みしめると、天秤棒が遠慮会釈もなく肩を圧しつけ、五尺何寸其まゝ大地に釘づけの姿だ。思い切って蹌踉とよろけ出す。十五六歩よろけると、息が詰まる様で、たまりかねて荷を下ろす。尻餅舂く様に、捨てる様に下ろす。下ろすのではない、荷が下りるのである。撞と云うはずみに大切の水がぱっとこぼれる。下ろすのも厄介だが、また担ぎ上げるのが骨だ。路の二丁も担いで来ると、雪を欺く霜の朝でも、汗が満身に流れる。鼻息は暴風の如く、心臓は早鐘をたゝく様に、脊髄から後頭部にかけ強直症にかゝった様に一種異様の熱気がさす。