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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
午後は到頭室内九十度に上った。千歳村の生活をはじめて六年、九十度は今日が初である。戸と云う戸、障子と云う障子、窓と云う窓を残らず開放し、母屋は仕切の唐紙障子を一切取払うて、六畳二室板の間ぶっ通しの一間にした。飲むと汗になると知りつゝ、たまりかねて冷たい麦湯を飲む、サイダアを飲む。飲む片端からぼろ/\汗になって流れる。犬のデカもピンも、猫のトラも、樫の木蔭にぐったり寝て居た。
あまり暑いから髪でも苅ろうかと、座敷の縁に胡踞かく。バリカンが駄目なので、剪で細君が三分に苅ってくれた。今朝苅った芝が、最早枯れて白く乾いて居る。北海道の牧場の様ですね、と細君が曰う。主人は芝を苅り、妻は主人の髪を苅る。芝の心は知らぬが主人は好い心地になった。
建具取払って食堂が濶くなった上に、風が立ったので、晩餐の卓は涼しかった。飯を食いながら、唯見ると、夕日の残る葭簀の二枚屏風に南天の黒い影が躍って居る。而して其葭簀を透かして大きな芭蕉の緑の葉がはた/\揺いて居る。
自動車の響が青山街道にしたかと思うと、東京のN君外三名が甲斐の山の写真を撮りに来たのだ。時刻が晩くて駄目だったが、無理に二枚程撮って帰った。