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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
日が傾くとソヨ吹きそめた南風が、夜に入ると共に水の流るゝ如く吹き入るので、ランプをつけて置くのが骨だった。母屋の縁に胡座かいて、身も魂も空虚にして涼風に浸る。ランプの光射す程は、樫、ふさもじ、小さな孟宗竹の葉が一々緑玉に光って、ヒラ/\キラ/\躍って居る。光の及ばぬあたりは、墨画にかいた様な黒い葉が、千も万も躍って居る。木立の間には白けた夏の夜の空が流れ、其処にはまた数限も無い星がチラ/\瞬いて居る。庭の暗の方から、甘い香や強い刺戟性の香が弗々と流れて来る。山梔子、山百合の香である。「夏の夜や蚊を疵にして五百両」これで蚊さえ居なかったら。
今日誤ってもいだ烏瓜を刳って細君が鶴子の為に瓜燈籠をつくり、帆かけ舟を彫って縁につり下げ、しば/\風に吹き消されながら、小さな蝋燭をともした。緑色に透き徹った小天地、白い帆かけ舟が一つ中にともした生命の火のつゞく限りいつまでもと其表を駛って居る。
(明治四十五年 七月十八日)
明治天皇崩御の前後
一
明治四十五年七月二十一日。
日曜だが、起きぬけに二時間の芝苅。
天皇陛下御不例の発表があった。わざ/\発表がある程だ。