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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
西は重畳たる磐城の山に雲霧白く渦まいて流れて居る。東は太平洋、雲間漏る夕日の鈍い光を浮べて唯とろりとして居る。鰹舟の櫓拍子が仄かに聞こえる。昔奥州へ通う浜街道は、此山の上を通ったのか。八幡太郎も花吹雪の中を馬で此処を通ったのか。歌は残って、関の址と云う程の址はなく、松風ばかり颯々と吟じて居る。人の世の千年は実に造作もなく過ぎて了う。茫然と立って居ると、苅草を背一ぱいにゆりかけた馬を追うて、若い百姓が二人峠の方から下りて来て、余等の前を通って、また向の峰へ上って往った。
日の暮に平潟の宿に帰った。湯はぬるく、便所はむさく、魚は鮮しいが料理がまずくて腥く、水を飲もうとすれば潟臭く、加之夥しい蚊が真黒にたかる。早々蚊帳に逃げ込むと、夜半に雨が降り出して、頭の上に漏って来るので、遽てゝ床を移すなど、わびしい旅の第一夜であった。
浅虫
九月九日から十二日まで、奥州浅虫温泉滞留。
背後を青森行の汽車が通る。枕の下で、陸奥湾の緑玉潮がぴた/\言う。西には青森の人煙指す可く、其背に津軽富士の岩木山が小さく見えて居る。
青森から芸妓連の遊客が歌うて曰く、一夜添うてもチマはチマ。