Classici giapponesi con furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Leggi 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 335.908 caratteri · 669 schermate
その時、岨道を走っていた大鹿の群が何に驚いたか、算を乱して谷の方へ飛んで下りようとしたかと思うと、その幾頭かは悲鳴と共に朱に染まって地に斃れた。征矢に射られたものらしい。とは云え誰がそれを射たのか、満山の雪景一鳥啼かず、まして人間の影さえなく、どこで射たのかそれさえ解らない。
と、忽然と鬨の声が谷の底から湧き起った。
「さては谷底にいると見える」
「雪の厚いのを幸いに辷って降りようではござらぬか」
二人はにわかに勇気を得て颯と谷底へ身を躍らせた。凍った雪が二人を担って、掠り傷さえ受けもせず易々と谷底へ下り立ったが突兀たる雪の巌、氷張り詰めた河の畔、脹れ上がった綿かのように雪を持ち上げている灌木など四辺は荒涼と見渡たされたけれど、鬨の声の主は見当らない。空虚! 空虚! 空虚! である。
「どうしても俺らには解らねえ」
裸体武兵衛はこう怒鳴ると雪の上へ腰をドンと据えた。
「狐狸の悪戯か天狗の業か、何んにしても稀有の事ではある。声はあっても形はない木精そっくりの放れ業じゃ」
「放れ業には相違ないが」数馬の声は打ち湿った。「放れ業には相違ないが、これには何か訳があろう。