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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

四

どうか一軍の雑兵を私にお貸し下げください。江を渡って、叔父を救け、いささか亡父の霊をやすめ、せめて母や妹たちの安穏を見て再び帰って参りますから」

彼は、そう云い終ると、黙然と考えこんでいる袁術の眸の前へ――伝国の玉璽の入っている小筐をうやうやしくささげて出した。

眼は心の窓という。一目それを見ると、袁術の顔はぱっと赭くなった。つつみきれない歓びと野望の火が、眸の底に赫々とうごいた。

四

「この玉璽を質としてお手にあずけておきますから、願いの儀を、どうかお聞き届けくださいまし」

孫策がいうと袁術は、

「何。玉璽をわしの手に預けたいと?」

待っていたといわぬばかりな口ぶりで快諾した。

「よいとも、よいとも、兵三千に、馬五百匹を貸し与えよう。……それに、官爵の職権もなくては、兵を下知するに、威が届くまい」

袁術は、多年の野望がかなったので、孫策に、校尉の職を与え、また殄寇将軍の称をゆるした上、武器馬具など、すべて整えてくれた。

孫策は、勇躍して、即日、勢を揃えて出立した。

従う面々には、先の君理、子衡をはじめとして、父の代から仕えて、流浪中も彼のそばを離れずにきた程普、黄蓋、韓当などの頼もしい者もいた。