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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

四

いやといえば、新手の張済軍に叩きのめされるおそれがあるので、

「爾今、共に協力して政事をたて直そう」と、和解した。

質となっていた百官も解放され、帝もはじめて眉をひらいた。帝は張済の功を嘉し、張済を驃騎将軍に命じた。

「長安は大廃しました。弘農(陝西省・西安附近)へお遷りあってはいかがです」

張済のすすめに、帝も御心をうごかした。

帝には、洛陽の旧都を慕うこと切なるものがあった。春夏秋冬、洛陽の地には忘れがたい魅力があった。

弘農は、旧都に近い。御意はたちまち決った。

折しも、秋の半ば、帝と皇后の輦は長い戟を揃えた御林軍の残兵に守られて、長安の廃墟を後に、曠茫たる山野の空へと行幸せられた。

四

行けども行けども満目の曠野である。時しも秋の半ば、御車の簾は破れ、詩もなく笑い声もなく、あるはただ、惨心のみであった。

旅の雨にあせた帝の御衣には虱がわいていた。皇后のお髪には油の艶も絶え、お涙の痩せをかくすお化粧の料もなかった。

「ここは何処か」

吹く風の身に沁みるまま帝は簾のうちから訊かれた。薄暮の野に、白い一水が蜿々と流れていた。

「覇陵橋の畔です」

李が答えた。