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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

風の便り

一

「いや、悪かった。もう疑わん。さっそく消息を通じ給え。もし関羽が味方にきてくれれば、顔良、文醜が生きかえってくるにもまさる歓びであろう」

玄徳は拝諾して、黙々、自分の陣所へ帰った。

幕営のそと、星は青い。

玄徳はその夜、一穂の燈火を垂れ、筆をとって、細々と何か書いていた。

――もちろん関羽への書簡。

時おり、筆をやめて、瞑目した。往事今来、さまざまな感慨が胸を往来するのであろう。

燈火は、陣幕をもる風に、パチパチと明るい丁子の花を咲かせた。

「あ……。再会の日は近い!」

彼は、つぶやいた。燈火明るきとき吉事あり――という易経の一辞句を思いだしたからである。一点、彼の胸にも、希望の灯がともった。

風の便り

一

大戦は長びいた。

黄河沿岸の春も熟し、その後袁紹の河北軍は、地の利をあらためて、陽武(河南省・原陽附近)の要害へ拠陣を移した。

曹操もひとまず帰洛して、将兵を慰安し、一日慶賀の宴をひらいた。

その折、彼は諸人の中で、

「延津の戦では、予がわざと兵糧隊を先陣につけて敵を釣る計略を用いたが、あれを覚っていたのは荀攸だけだった。しかし荀攸も口の軽いのはいけない」