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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

二

「以上、申しあげた儀は、それがしの一存のみでなく、呂布の意中でもあること。仔細はこの書面に――」と、披見を促した。

韓暹は始終、沈湎と聞いていたが、呂布の書簡をひらいて遂に肚を決めたらしく、

「いや、実を申せば、自分も常々、袁術の増長ぶりには、あいそも尽き、漢室に帰参したいものと考えていたものの、何せん、よい手蔓もなかったので――」と、本心を吐いた。

ここまでくれば、もう掌上の小鳥。陳大夫は心にほくそ笑みながら、

「第七軍の楊奉と尊公とは、常から深いお交わりであろうが。――楊将軍を誘って、共に合図をおとり召されては如何」

「合図をとれとは?」

韓暹は、小声のうちにも、息をはずませた。ここ生涯の浮沈とばかり、心中波立っている容子が明らかであった。

陳大夫も、声をひそめて、

「されば、徐州に迫る日を期して、ご辺と楊奉とで諜しあわせ、後ろより火の手をあげて裏切りし給え。同時に、呂布も精鋭をひきいて、一揉みに駆けちらせば、袁術の首を見るは半日の間も待つまい」

「よし。誓って――」と、韓暹は月を見た。夜は更けて松のしずくが梢に白い。陣中、誰のすさびか笙を吹き鳴らしている者がある。