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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

四

炎暑に渇ききって、水もなく苦しみ弱る兵らに向い、この先へ行けば、小梅の熟したる梅林があるぞ。そこまで急げや――と詐って進むほどに、兵は皆、口中に唾のわくを覚え、遂に、渇をわすれて長途の夏を行軍したことがある」

曹操は、そのはなしが、自慢らしい。そう語って、

「――で、急に君と、その小梅の実を煮て賞翫しながら、一酌くみ交わしたいものと思い出したわけなんだ。まあ来たまえ。梅林を逍遥しながら、設けの宴席へ、予が案内するから」

曹操は、先に立って、はや広い梅園の道をあるいていた。

四

「ほ……。これは宏大な梅林ですな」

曹操の案内に従って、玄徳も遠方此方、逍遥しながら、嘆服の声を放った。

「劉予州。――君はここを見るのは、初めてかね」

「南苑のご門内に通ったのは、今日が初めてです」

「それなら、花の頃にも、案内すればよかったな」

「丞相おんみずからご案内に立たれるだけでも、恐懼の極みであります」

「酒席の小亭は、まだ彼方の梅渓をめぐって、向う側にある眺めのよい場所だよ」

――と、俄に。

ばらばらっと頭上へも大地へも降り落ちてきた物がある。みな青梅の実であった。

「……オオ!」