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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

三

「すぐ陣中に梟けろ」

曹操は命じた。

王垢の首は竿に梟けられて陣中に曝された。それに添える立札まで先に用意されてあった。

立札には、

王垢、糧米を盗み、小桝を用いて私腹をこやす。

罪状歴然。軍法に依ってここに正す。

と、書いてあった。

「さては、小桝を用いたのは、丞相の命令ではなかったとみえる。ひどい奴だ」

兵は、王垢を怨んで、曹操に抱いていた不平は忘れてしまった。その士気一変の転機をつかんで、曹操は即日大号令を発した。

「こん夜から三日のうちに、寿春を攻め陥すのだ。怠る者は首だぞ。立ちどころに死罪だぞ!」

三

その夜、曹操は軍兵に率先して、みずから壕ぎわに立ち、

「壕を埋めて押しわたれ。焼草を積んで城門矢倉を焼き払え」と、必死に下知した。

それに対して敵も死にもの狂いに、大木大石を落し、弩弓を乱射した。

矢にあたり、石につぶされる者の死骸で、濠も埋まりそうだった。ために怯み立った寄手のなかに、身をすくめたままで、前へ出ない副将が二人いた。

「卑怯者っ」

曹操は叱咤するや否や、その二人を斬ってしまった。

「まず、味方の卑怯者から先に成敗するぞ」

自身、馬を降りて土を運び、草を投げこみ、一歩一歩、城壁へ肉薄した。