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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页
四
士は士を知るというものであろう。
「おう、張遼か」
「やあ、関羽どの」
ふたりは、胸と胸を接するばかり相寄って、ひとみに万感をこめた。
「ご辺はこれへ、何しに参られたか。――察するに曹操から、この関羽の首を携えてこいと命ぜられ、やむなくこれへ参られたか」
「いや、ちがう。平常の情を思い、貴公の最期を惜しむのあまり……」
「しからば、この関羽に、降伏をすすめにこられた次第か」
「さにもあらず。以前、それがしが貴公に救われたこともある。なんで今日、君の悲運をよそにながめておられようか」
張遼は石を指して、
「まず、それへかけ給え。拙者も腰をおろそう」と、ゆったり構え、「……すでにお覚りであろうが、玄徳も張飛も、共に敗れ去って行方もしれない。ただ玄徳の妻子は、下城の奥にいるが、そこも昨夜わが軍の手に陥ちてしまったから、二夫人以下の生殺与奪は、まったく曹丞相のお手にあるものといわねばならぬ」
「……無念だ。……この関羽をお見込みあって、ご主君よりお預け給わったご家族をむなしく敵の手にまかすとは」
関羽は、首をたれて、長大息した。――自分の死は、眼前の朝露を見るごとくだったが無力な女性方や、幼い主君の遺子などを思うと、さしもの英豪も、涙なきを得なかった。