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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

三

「相府へお出ましになりました」

「えっ、曹操の召しでか」

「はい、曹丞相が何やら急に、お迎えを向けられたので」

聞くと、ふたりは呆然顔を見あわせて、

「しまった……。われわれが居れば、是が非でも、お供について行かれたものを」

思いあたることがある。日ごろ沈着な関羽さえ、気もそぞろに、玄徳の身を案じた。

「迎えには、誰と誰が来たか」

「曹操の腹心、許、張遼のおふたりが、車をもって参りました」

「いよいよ怪しい」

「兄貴、考えている場合ではない。後からでも構うまい。もし門を通さぬとあれば、ぶちこわして押し通るまでだ」

「おお、急げ」

ふたりは宙を飛んで、許都の大路を、丞相府のほうへ駈けて行った。

それより数時前に。

玄徳は曹操からふいの迎えをうけて、心には、何事かと、危ぶまれたが、使いの許※(「ころもへん+睹のつくり」、第3水準1-91-82)、張遼にたずねてみても、

「御用のほどは何事か、われらには、わきまえ知るよし候わず」と、にべもない返辞。

といって、断るすべもなく、彼は心中、薄氷を踏むような思いを抱きながら、相府の門をくぐった。

導かれたところは、庁ではなく曹操の第宅につづく南苑の閣だった。