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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

四

誰も笑わないことにしよう

前世の因縁、しかたがない

徐州城内の、北苑、呂布の家族や女たちのみいる禁園であった。十四ばかりの少女が、芙蓉の花を折りながら歌っている。歌に甘えて、その背へ、うしろから抱きついているのは、少女の妹であろう。やっと歩けるほどな幼さである。

四

誰もいないと思ってか、少女は手折った芙蓉を髪に挿し、また、声を張りあげて歌っていた。

妹是桂花 香千里

哥是蜜蜂 万里来

蜜蜂見花 団々転

花見蜜蜂 朶々開

呂布はその声に、後閣の窓から首を出した。

眼をほそめて、娘の歌に聞き恍れている顔つきである。

「…………」

姉は十四、妹は五ツ。

ふたりとも、呂布の娘である。

十四の姉のほうは、先頃、袁術の息子へ嫁がせるまでになって、一夜、盛大な歓宴をひらき、珠簾の輿にのせて、淮南の道へと見送ったが、にわかに、模様が変ったため、兵を派して輿を途中から連れもどし、そのまま、もとの深窓に封じてしまった、――あの花嫁御寮なのである。

花嫁はまだ小さい。

国と国の政略も知らない。戦争がどこに起っているかも知らない。父親の胸のうちも、徐州の城の運命も知らない。

ただ歌っている――そして幼い妹と手をつないでくるくるめぐっていたが、ふと、父の呂布の顔を、後閣の窓に見たので、